ルディーン君がイーノックカウに向かった次の日の事。
「おばあちゃん。スティナ、きたよ!」
「ああ、いらっしゃい。スティナちゃん」
この頃は暑さで大人たちはみんなバテているのに、スティナちゃんはいつも元気ねぇ。
そんなスティナちゃんは私の顔を見ると、早速お菓子のおねだりをしてきた。
「おばあちゃん。あのね、スティナ、つべたいおかしがたべたいなぁ」
「冷たいお菓子? ええ、いいわよ。今朝レーアがアイスクリームがあるからそれを食べましょう」
「あいすくりーむ? やったぁ! スティナ、あいすくりーむすき」
アイスクリームはルディーンが作った魔道具が無いと作れないから、うちに来ないと食べられないのよね。
だからスティナちゃんは、アイスクリームが食べられると聞いて大喜び。
そして私もそんなスティナちゃんを見てほっこりしながら冷蔵庫に近づいて行ったんだけど、
「スティナ! あなたさっき、うちでかき氷を食べたばかりでしょ」
そこに入ってきたヒルダに、止められてしまったのよ。
「あら、そうなの?」
「ええ。スティナはまだ小さいし、あまり冷たいものばかり食べさせてお腹を壊したら大変だもの。だからお母さん、アイスクリームは出さないで」
「やだ! スティナ、あいすくりーむたべたい」
ヒルダに食べてはダメと言われてスティナちゃんはおかんむりだ。
でも、確かにいくら暑いからと言ってそう何度も氷菓子を食べさせたら、ヒルダの言う通りスティナちゃんの体が心配なのよねぇ。
だから食べちゃダメって言うのも解るんだけど……。
「スティナ、あいすくりーむ、たべるんだもん。わぁ〜〜〜〜ん」
どうしても食べたかったのか、スティナちゃんが泣き出してしまったのよね。
これには私もヒルダも大弱り。
特に私はスティナちゃんにアイスクリームがある事を教えてしまった張本人でしょ?
それだけに、余計この状況はつらいわけで。
「えっと、スティナちゃんは冷たいお菓子が食べたいのよね?」
だから少しだけ考えた後、私はスティナちゃんにこう質問したの。
「うん。スティナ、つべたいのがたべたい」
「それじゃあ、冷たければアイスクリームじゃなくてもいい?」
「つべたいおかしならいいよ」
そしたらスティナちゃんは、アイスクリームじゃなくてもいいと言ってくれたのよね。
でも、それを横で聞いていたヒルダは、困ったような顔をして文句を言って来たわ。
「お母さん。気持ちは解るけど、さっきも言った通りこれ以上冷たいものを食べさせるのは」
「解ってるわ。でもそれはアイスクリームやかき氷の話でしょ?」
いくら可愛いと言っても、私だってこれ以上スティナちゃんに氷菓子を食べさせるべきじゃないって言うのは解ってる。
だから別の、ルディーンが前に作ってくれたあるお菓子を作ってあげようと思ったんだ。
「そうだけど……この頃は暑さで卵もあまり手に入らないからプリンも作れないんでしょ? 他に何か冷たいお菓子ってあった?」
「ふふふっ、それはできてからのお楽しみよ」
私はそう言いながら、ルディーンが初めてあのお菓子を作った時の事を思い出していたの。
■
その日はね、おトイレ用の紙を作るために、いつものようにねばねばする草を採ってたんだよね。
そしたらさ、獲った草を見て僕は思ったんだ。
「この草。他にもなんかに使えるんじゃないかなぁ?」
おトイレで使う紙を作るのに使う草だから、ちゃんと毒はないって事は調べといたんだよ?
けどその時は紙を作る事しか考えてなかったから、その他の事は全然調べてないんだよね。
でも毒が無いって事は、他にもなんか使い道があるかもしれないって事だもん。
だから僕、もう一度鑑定解析をする事にしたんだけど、そしたらこの草のねばねばにはでんぷんってのが入ってるって出たんだ。
「そっか。この草のねばねばって、でんぷんが入ってるから柔らかい紙が作れたのかも?」
でんぷんってのはね、それだけでノリになるんだよって、前の世界で見てたオヒルナンデスヨでやってたんだよね。
それを思い出した僕は、同時にある事も思い出したんだ。
「あっ、そう言えば、オヒルナンデスヨに出てきた草って、茎や葉っぱより、根っこにでんぷんがいっぱい入ってるって言ってたっけ」
その時やってたのはあるお菓子を作ろうってので、そのお菓子はね、でんぷんから作った片栗粉ってのととお砂糖だけでできるんだよって出てたお鍛冶職人のおじさんが言ってたんだよ。
だからさ、もしこの草の根っこにも葉っぱや茎から取れるねばねばよりいっぱいでんぷんってのが入ってたら、きっとそのお菓子も作れるって事だよね?
と言う訳で今度は草を摘むんじゃなくって、根っこまで掘りだしてみたんだ。
そしたら茎よりふっとい根っこが出てきてびっくり。
その上鑑定解析したらこの根っこ、茎や葉っぱなんかよりすっごくいっぱいでんぷんてのが入ってる事が解ったんだよ。
「あっ、この根っこの方にはねばねばしたのが無いのか」
ねばねばが無かったら、おトイレの紙を作るのには使えないって事だもん。
ならこっちは全部、でんぷんってのをとるのに使っちゃっても大丈夫だね。
って事で、草の茎や葉っぱは今まで通りおトイレ用の紙を作る材料にして、その時に一緒に採った根っこからはでんぷんってのを取る事にしたんだ。
いつものようにおトイレ用の紙を作った後、僕は根っこだけを持っていつもの作業部屋に入ったんだ。
でね、そのまんまだとやりにくいからって根っこをナイフで細かく切った後、それをすり鉢を使ってゴリゴリってすりつぶしたんだ。
でね、今度はそのすりつぶしたから錬金術ででんぷんを抽出。
そしたらさ、真っ白で指で押すとキュッキュって音が鳴るくらい細かい粉が取れたんだよね。
「確か、これって片栗粉ってのとおんなじのなんだよね?」
違う草から取れたやつだから正確には片栗粉とは違うもんなんだけど、確かお芋さんから取れたでんぷんからも片栗粉ってのを作ってるんだよってオヒルナンデスヨで言ってたんだよね。
だったらこれも片栗粉って事でいいよね?
そんな事を考えながら、僕はオヒルナンデスヨでやってたお菓子の作り方を思い出していったんだ。
「確かこれで作れるはずだよなぁ」
思い出したのを一通り板に書きだせたから、早速作ってみる事に。
作り方を書いた板と片栗粉を持って、僕は台所に行ったんだよね。
そしたらさ、そこにはお母さんがいて、一人でお茶を飲んでたんだ。
「あら、ルディーン。どうしたの?」
「あのね、新しいお菓子を作ろうって思ったから来たんだよ」
「まぁ、また新しいお菓子を?」
新しいお菓子って聞いたお母さんは、にっこり笑って手伝ってあげるよって。
だから二人で作る事にしたんだよ。
「最初は何からするの?」
「えっとね、お砂糖を魔法で細かくして、それをこの粉と混ぜるんだ。でね、そのあとちょっとずつお水を入れてくんだよ」
お砂糖、そのまんまだとおっきすぎてなかなか溶けないでしょ?
だから生クリームやアイスクリームを作る時とおんなじように、まずは魔法で細かくしてったんだ。
でね、それを片栗粉と混ぜてから、だまにならないようにちょっとずつお水を入れていく。
あっ、お砂糖はちょっと多めね。
だって上からかけるもんが何にもないでしょ?
だからそのまんま食べてもおいしいようにって、ちょっと甘めにする事にしたんだ。
「これくらいかなぁ?」
でね、あんまり入れすぎちゃうとだらだらになっちゃうからって、料理人スキルだよりで丁度いいくらいだろうってところまでお水を入れたところで秘密兵器投入だ。
「あら、また新しい魔道具を作ったの?」
「うん。一人で火を使ったら危ないでしょ? だから危なくないお鍋を作ったんだ」
そう言って僕がうんしょって持ってきたのは、さっき材料を入れた新しい鍋がすっぽり入る魔道具。
僕、お母さんがら、一人で火を使っちゃダメって言われてるでしょ?
でもオーブンやパンケーキを作る魔道ホットプレートは火を使わないから、僕一人でも使っていいんだって。。
だったらさ、ホットプレートとおんなじように、銅で作ったボウルの中があっつくなる魔道具を作ったらお母さんも使っちゃダメって言わないんじゃないかなぁ?
そう思って作ったのが、この魔道鍋なんだ。
これにさっき混ぜた材料を入れてっと。
「確か中くらいの火でやるって言ってたっけ」
オヒルナンデスヨでお菓子職人さんが言っていた通り、中くらいの火とおんなじくらいの温度になるようにつまみを動かしてスイッチオン!
これね、ずっとかき回してないと焦げちゃうって言ってたから、僕は一生懸命木べらを動かしたんだよね。
「あっ、だんだん固まってきた」
このお菓子はね、一度にいっぱい作るとすっごくいっぱい力がいるんだって。
だから今回はちょびっとだけしか作らなかったつもりなんだけど、でもね、それでも段々かき回してる木べらが重くなってきたんだ。
でもここでやめちゃうと、せっかくここまで作ったのに焦げちゃうかもしれないでしょ?
そんなのヤだから、僕はそのまんま木べらを動かし続けたんだけど……。
「あらあら、ルディーン。それじゃ中のものが焦げてしまうわ。変わってあげるから木べらを貸しなさい」
でもやっぱり僕の力じゃ無理って思ったのか、お母さんが変わってかき回してくれることになったんだ。
でね、そうしているうちに白かったのがだんだん透明になってって、、
「お母さん、こんなもんでいいと思うよ」
「そう? なら火を消してもらえる?」
見た感じ、オヒルナンデスヨでこれくらいだよって言ってたのとおんなじくらいになったもんだから、僕は魔道具のスイッチを消して中のものを別のお鍋に移してもらう。
スイッチを消したからって言ってもすぐに冷たくなるわけじゃないから、そうしないと焦げちゃうもんね。
「お母さん。もうちょっと硬くなるまで練って」
「解ったわ」
でね、それをもっと練ってもらうと段々と弾力が出てきたから、それをちょっとずつ木のおさじで掬って氷水の中へ。
「ほんとはそのまんま冷やした方がいいんだろうけど、すぐ食べたいもんね」
僕はそう言いながら氷水をかき回して入れたもんを冷やしたら、お皿の上に取り出してわらび餅の完成だ。
「あら、冷たくておいしいわね。それに代わった食感」
「うん。おいしいね」
ホントはきな粉があるといいんだけど、無くてもお砂糖をちょっと多めにしたからとっても甘いんだよ。
それにおミスの中に入れたからなのか、お口に入れるとつるつるしてるのに噛むとすっごくモチってしてるんだもん。
こんなの他に食べた事ないから、僕とお母さんはおいしいおいしいって言いながら食べたんだ。
■
「ルディーンが作ったほかのお菓子に比べると甘さも控えめだし、何より作るのが大変だからおいしいけどあまり作った事が無いよよね」
「確かに大変そうではあったけど他にはない食感のお菓子だし、何よりかき氷とかと違って冷たすぎないのがいいわ」
そう言いながら、ヒルダはおいしそうなわらび餅を食べるスティナちゃんの頭をなでている。
うん、確かにこれなら冷たすぎる事もないだろうし、何より火を通して作るからお腹を壊す心配もあまりないものね。
そう考えると、小さな子供に食べさせるお菓子としては最適なのかも?
「スティナ、おいしい?」
「うん! スティナね、このおかし、すき!」
私はヒルダとスティナちゃんを見ながらそんな事を考えていたんだ。
ここしばらくお姉さんズのお話ばかりで、この物語のメインヒロインのスティナちゃんが出てきませんでした。
でもそれではだめだろうという事で久しぶりの登場です。
とは言ってもスティナちゃんが主役の話は作れなかったので、結局はルディーン君のお話になっているんですけどね。
でもまぁ、久しぶりに新しいお菓子も作れた事ですし、これはこれでよかったかな?
お母さんの感じからすると、このわらび餅も甘味処カールフェルトに並びそうだし。
材料の片栗粉もトイレ用の紙を作るついでに作ってそうだから、ルディーン君が村に帰ってきた時には小さい子向けの定番のお菓子になってるかも?w